23.悪い星の生まれは傑出する



 私が占星術をプロとしてなりわいにしていたのはもう5年ほど前の話である。私は占いを信じている訳ではないが、その世界観とくに私の場合は、その類型論やライフサイクル論、運命論と自由意思論の対立という観点から、占星術に惹かれていた。大学の卒論も西洋占星術で書いたほどに入れ込んでいたのである。

 ところで、占星術の典型的なテキストにはこういうくだりがあり、当時の私は目から鱗が落ちたような思いをしたのを覚えている。それは、「よい星の生まれは平穏無事な人生をおくり、悪い星の生まれは傑出する」というものであった。よい星の下に生まれるとは、生まれた時の惑星の配置が吉角をなすものが多い場合であり、悪い星の下で生まれるとは、凶角をなすものが多い場合である。

 しかし、この吉凶というのは、きわめてパラドキシカルなものであって、よい星の下に生まれた人、つまり幸運に恵まれた人というのは、平穏無事な人生はおくるが、とても無難で平凡な人生になるということ、ひいては無味乾燥な人生をおくることをあらわしている。逆に悪い星の下に生まれた人、つまり悪運がついて回る人というのは、波乱万丈でドラマチックな個性的な人生をおくるということにもなるわけだ。

 今思い返すと、占い師仲間では、総じて悪い星の生まれの人を好んでいたように思えてならない。というのも、こういう表現が相応しいかどうかわからないが、つきあったり、鑑定したりしていて実に面白いのだ。そればかりか、逆境や苦境に立たされ、様々な経験を積んできた人は、人のこころにも敏感で傷ついた人や弱者にとても優しい。自分がその辛さをわかっているからである。有名な芸術家や政治家などで悪い星の生まれの人というのが多いのもそうした人望を買われてのことだと言われている。

 はたして「病」が「悪い星」であるとしたら、病を持った人は必ず傑出する、そう信じて疑わないのである。


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