20.こころのいのちだいじょうぶ?



入院していたとき、発達遅滞というんでしょうか、歳は40歳くらいなのに脳が小さいために、小さい子供のようにしゃべる男性の患者さんがいた。普段無口で意思疎通がたまにスムーズでないときもあった。だけど、私は彼とよく一緒にタバコを吸っていた。彼といるとなんとなくこころがなごむというか、落ち着く感じがしたのだ。看護婦さんたちは彼のことを「○○ちゃん」とちゃんづけで呼んでいた。彼は、若い頃彼女にふられて、そのショックが発病の原因になってしまったと聞いたことがあった。彼は背が小さく、いつも首をうなだれて臆病そうに見えるけど、歩き方などがどことなく幼い感じがする。普段は無口だけど、たまにポロっとひょうきんなことを言ったりする。もちろん、本人は周りを笑わそうとしてやっている訳ではないことはすぐにわかる。それでも看護婦さんたちや病棟の患者さんたちの笑いを誘うことがしばしばあった。笑うといっても彼の病気を笑ったり、冷笑したりということではない。偶然口から出る拙い言葉や変わった言葉がしばしば的確なことや真実を鋭く突くことがあるのだ。それがしばしば場の空気に優しい笑いを生じさせるのだ。ある日、私がまたその患者さんとタバコをすっていたときのことである。「あのね、こころのいのち、だいじょうぶ?」と私の顔を覗き込んで、僕がは?っという顔をしていたら、彼は臆病そうな表情をしていた。こころのいのちって一体なんだろう?きっとこころの純粋さのことなんかを言いたかったのかな、などとしばし考えた。しかし、ずいぶん哲学的なことを聞いてくるもんだなぁと感心していたら、また、「こころのいのち、だいじょうぶ?」と同じことを言ってきた。私は「うん、だいじょうぶだと思うよ」って言ったら、次の瞬間、「えへ、えへ、えへ」と彼は小さく笑った。看護婦さんにそのことを話したら、「へええー、○○ちゃんずいぶん難しいことkomorebiさんに言ったんだねぇ」と、彼に声をかけていた。すると、また彼は、「えへ、えへ、えへ」と小さくはにかんだように笑っていた。。。

あなたのこころのいのちは、だいじょうぶ?


戻る

トップへ戻る