16.死んでましたよ



 入院中ひどい不安と、恐怖と、虚無感に襲われていた時のこと。真夜中に隠し持っていた睡眠薬60錠をぷちぷちとあけては飲み、あけては飲み、泣きながら飲み続けた。意識がだんだん朦朧とする中、僕は知らないうちに携帯で妻に電話をしていた。しばらく押し問答があったようだが、妻が宿直の看護士さんに電話代わってって言ったようで、ナースステーションまで半分意識がなくなりながら携帯を持っていった。主治医の先生が来てくれるよって、遠くの方で話しているのが聞こえた。それから先、まったく意識がなくなってしまった。どうやらその後救急隊と主治医の先生がかけつけてくれて、精神科救急のある大きな病院まで、主治医と妻が同乗してくれて救急車で運ばれたらしい。手も足も頭もぶらぶらな状態だったらしい。。。オペ室で胃洗浄と浣腸をされたそうだが、処置が始まったのが夜中の2時で、終わったのが4時くらいだったそうだ。その後、集中治療室で僕の意識が戻ったのが明け方の6時。目をあけると、救命救急のドクターと妻の姿がそこにはあった。しばらくの間があった。のどが痛い。少し咳き込んだら、「管通したから多少のど痛むよ」とドクターが言った。そして立て続けに、「あと少し処置が遅かったら死んでましたよ」「もうばかなことはしないでね」というマスク越しの声が聞こえた。横に目をやるとズタズタに切られた僕のパジャマがあった。「助かったんだ...よかった...」そんなひそかな思いが心に浮かんだと同時に「死ってあっけないな...」となんだか寂しい感じがした。


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