14.親より先に死ねない



 僕の妻が、僕の看病に疲れて一過性のうつ状態になっていたとき、僕の病気は自分のせいだと妻自身を責めて、「もう生きてるのが辛い」と漏らしたことがあった。普段そこまで思いつめることのない妻が言ったひとことに僕は驚き、「そんなこと考えちゃだめだよ」なんて、自分のことを棚にあげて言ったら、「大丈夫、私は親より先に死ねないから。」と言った。それを聞いてホッとしたのを覚えている。どんな親でも自分を育ててくれた親。そしてまた親も人の子であり人間である。できれば幸せに生きる権利がある。言葉に出さなくても、親は子どもの健康を願っているし、死ぬことなど喜びはしない。いろんな親不孝をしてきたのだから、せめての恩返しとして自分にできることは、親を悲しませない事だと思った。


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